アクリルの意外な用途について
プラスチックマーケットの工場ネットワークの中でもいちばん製作実績がある素材、それはアクリル樹脂です。
中でもワーズウィズ、丸ノ内工芸、アート日向という板加工グループでは最も中心的な素材と言えます。
今日はそんなアクリル樹脂でも、意外な使われ方してるパターンをご紹介させて頂きます。
まず1つ目は水槽。ガラスのイメージがありますが、ガラスは重量があって(アクリルの2倍)割れてしまうため
軽くて割れにくいアクリルが多く使用されています。こちらでは通常の貼り方では完全には一体化しませんので「重合接着」
という技法で貼られます。簡単に言うとアクリル間に重合液を流し込んでアクリルを一体化させる技法です。
主に箱組みする角の部分を貼る時に使われる技法で、仕上がりは内側にRがついた状態になります。(下図ご参照ください)
そして2つ目は戦闘機の風防・キャノピーです。最近はブルーインパルスの飛行が話題になってますね。
現代においてはポリカやガラスと組み合わされて使用されていますが、パイロットの視界を確保し、命を守る上で重要な役割を
担っております。その透明度と軽さそして強度が重宝されています。
さらに3つ目は同じ乗り物の潜水艇。「しんかい6500」という水深6500メートルまで潜ることができる有人潜水調査船が
あるのですが、そちらの船外を覗く窓にもアクリルが使用されています。直径500mmで厚みが138mmのすり鉢のような形状で
約70mmのアクリル板2枚を前述した重合接着で貼り合わせて製作されているようです。
水深6500mの世界の水圧は途方もなく、例えれば親指くらいの範囲に軽自動車の重量の圧力がかかる計算になります。
その力は1回の潜水で138mm厚の窓が9mm凹むと言います。そんな過酷な環境下でアクリルが使用される要因としてはやはり
透明度と軽さと強度に他なりません。
4つ目は歯医者さんで作られている「義歯」。いわゆる「入れ歯」なのですが、そんな入れ歯もアクリル樹脂でできているのです。
厳密には「アクリルレジン」と呼ばれているのですが、一般的に「義歯床」と言われている歯茎を模した部分と「義歯本体」の部分
と両方がアクリル樹脂で製作することができます。
アクリルというと硬くて爪先でたたくとコツコツ音がするイメージですが、義歯の場合は液体とパウダーで型に入れて、重合させて
固めて製作する技法のため、通常の板状のアクリルとは手触りは違ってきますね。
では義歯でアクリルが選ばれる理由は、樹脂成型で作られるので「装着時の異物感」が軽減されることと「口腔粘膜にフィットでき
る」ためと言えますが、懸念点は耐久性がないところのようですね。
さて最後は自社の製作物です。当方は企業・ブランド様からのご依頼で製作する物が多いため、画像を出せない実績もかなりあるの
ですが、その中でも画像が出せる公共機関の物で変わり種の製作物をご紹介させて頂きます。
ワーズウィズ-アート日向で製作しました駅のベンチですね。アクリルと公共機関の設備とは結び付かない方も多い思いますが、
その抜群の透明度と耐久性を見込まれてベンチを製作したことも少なくありません。
椅子といえば、通常の家庭用の家具でも耐久テストを重ねて製作されるのですが、公共機関になると家庭用の10倍くらいの耐久性が
必要となって参ります。その厳しい基準をクリアして製作されたアクリルベンチ。その意匠は駅という公共の場にさりげなくそして
明確に華と彩りを与えていると言えるのではないでしょうか。
さて、本日紹介した【アクリルの意外な用途について】ですが、最後のベンチ以外も弊社の方で開発のための試作や実際に使用する
物を製造した経験がございます。(類似案件も含めてですが)
これらの加工をお考えの方がいらっしゃいましたらお気軽にお問合せ頂けたらと思います。