2021.11.14

過渡期に思う

過渡期に思う

プラスチックマーケットの協力工場で静岡市にあるアート日向にはさまざまな種類のアクリル加工依頼が来ます。

特に他で断られた難易度の高い加工などが多く集まってきます。その理由は同工場の特殊加工の実績の多さによります。

ちなみにアート日向の仕事の窓口は基本(株)ワーズウィズになっておりますね。http://waazwiz.com/

 

「封入」「3次元切削」「重合接着」など特殊加工の分野で残した数多くの実績が呼び水になっている訳ですね。

先般ご紹介した「PLACYCLE家具・什器」でもその「封入」「切削」「磨き」技術がいかんなく発揮されており、この製造物

を他の工場では製造できないと言い切れると思います。

 

今日はそんなアクリル特殊加工のパイオニアであるアート日向に長年勤務して今は工場長を務めている山崎さんにお話を聞いて

みました。デザイン系の専門学校を卒業してアート日向に就職して今年で19年。名だたるデザイナー様やブランド様から来る

チャレンジングな仕事は非常に刺激的だったといいます。その反面、そこに求められる美観や品質の精度の高さにいつもぶつかり、

奮闘を繰り返す日々でもあったとか。↓写真はPLACYCLE家具天板と山崎工場長

そんな長年のお仕事の中で「これは大変だった」と思う案件のベスト3を挙げてもらいました。

1位 アパレルブランド用アクリル店舗什器の製作~設置まで

いい品質を安価で提供しているアパレルブランド様の旗艦店用のアクリル店舗什器を20台を製作したのですが、

30tの厚材でワイドも高さも1600mmくらいで1台約500キロある什器をわずか1ヶ月で製作して、3~4日現場に

寝泊まりして設置とメンテナンスを行った時。

同率1位 家電メーカーの非接触充電器カバーの製作

TV製作で定評のある家電メーカー様とアクセサリーブランドを手掛けている有名デザイナー様とのコラボで、企画物の非接触充電

器のカバーを数万台製作したのですが、封入が絡んだ案件としては経験したことのない数量であることと家電メーカー様の品質基準

がとにかく厳しくて苦戦していた時。

 

3位 外資系ファッションブランド用アクリル店舗什器の製作~設置まで

こちらの特徴はアクリルの厚材で作った棚什器だけではなく、天井から3段アクリルBOX並べて吊るしてかつLEDを仕込んでいる

ところ。その発想には驚いた記憶があります。この現場の手伝いに自分も数日入りましたが、なかなかしびれたと記憶しております

から当時の現場担当の苦労も想像できるとともに、それを上回る案件があったというのも驚きですね。

 

さらに同率1位の2件は2012年の同じ時期に重なったとのことですので、その当時の工場の混乱と奮闘が思い浮かびますね。。

この2件を経験することにより「ある意味こわい物がなくなった」と山崎工場長は笑って振り返っておりました。

 

とはいえ最近は化粧品ディスプレイもブランド様の横展開が広がり、導入のタイミングが同じになるため、その時期はアート日向も

かなり立て込んで来るそうで、以前の物件の製作とはまた異なる「効率化」「正確さ」が求められてきており、それに対応できる

仕組み作りに追われているとか。全国の系列店でお店毎に什器タイプや仕様が異なり、しかも取扱商品や色数も尋常ではない

化粧品ディスプレイの世界。営業窓口をはじめ、設計担当、そして工場担当と一体になって進める必要のある総合的で難易度の高い

案件だと言えると思います。

今後の目標をお聞きすると「育成」という言葉が返って来ました。山崎工場長はどちらかと言うと「職人肌」で彼の加工技術は随一

のものだと感じております。黙って黙々と仕事をこなし、仕事が暗礁に乗り上げそうになった時も天才的なひらめきでリカバーして

窮地を脱した経験も一度は二度ではありません。(かく言う自分も助けてもらった時があります)

 

ただ、そんな工場長から「育成」という言葉が出て来たのは正直意外でした。寡黙で「自分の仕事を見て盗め」的なスタンスのよう

に感じていたのでその真意を訪ねるとやはり仕事の内容の変化により、一人ひとりが共通認識を持って同じ目線で臨まないと

乗り越えられないと感じているそう。なので「育成」によって「効率化」を実現してひいては「生産性向上」を目指す

というのが今後の目標であり、課題であると語ってくれました。

 

「限られた人数の奮闘による仕事の実現からの脱却」は小規模事業から大規模化を狙う企業の通る道のように思えますね。

 

さて、写真は訪問時に製作していた20t厚材をカットして仕上げて「溶剤接着」しているところです。厚材の接着は通常

「重合接着」が一般的なのですがアート日向では溶剤で溶かして接着しておりました。貼る時の前処理と接着するまでの固定という

別工程が必要なため、きれいに貼るのがなかなか難しい加工ですが、貼り終えたパーツを見るとかなりきれいに仕上がって

おりました。↓写真は若手のホープの職人さんです

 

今後もアート日向の特殊技術についてはご紹介させて頂けたらと思っております。