欧州エネルギー事情と脱炭素について
今週のもう一つのトピックは欧州の原油価格高騰による脱炭素政策の遅れについて触れてみたいと思います。
ロシアのウクライナ侵攻の影響はさまざまなところに現れておりますが、欧州の原油価格高騰を招き、再生エネルギー事業や
脱炭素への取り組みの遅れを招いているというのです。
まず原油産出国のベスト3を上げますと下記の通りになります。
1位.アメリカ 世界シェア18.6%
2位 .サウジアラビア 世界シェア12.5%
3位.ロシア 世界シェア12.1%
そしてこのロシアの原油輸出国の約半分が欧州になる訳です。
(ちなみに日本の輸入先は92%が中東諸国になります。)
ロシアのウクライナ侵攻は原油や天然ガスと言ったエネルギー価格の高騰を招き、それに付随してあらゆる物の価格が上がる
インフレを招くことになります。特にエネルギー資源の供給をロシアに委ねている欧州が受ける影響は甚大であると考えられます。
そのような状況下で「脱炭素」「再生エネルギー」先進国である欧州諸国では、「炭素価格※」の下落の事態となり、
地球温暖化対策への取り組みは遅れると言えそうです。
※企業などが排出する二酸化炭素(CO2)に付ける値段のこと。企業は排出量に応じて税金などのコストを負担する必要が
あるため、排出削減を促す効果があります。種類は下記の通りです。
①炭素税 企業などに対し二酸化炭素の排出量に応じて課税する仕組み
②排出量取引 たとえば排出量上限に達しないA社が上限を超えそうなB社にあまり分の排出量を販売すると言った取り組み
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原油と天然ガスのうち、地球環境への影響が軽減できるのが「天然ガス」になります。
天然ガスは原油や石炭に比べて温室効果ガスの排出量が少なく、蓄電池代わりに使える水素ガスの材料にもなるため、
「脱炭素」エネルギーとしてロシアも輸出量を増やしたい意向でした。
ただ、ウクライナの惨状を見た欧州諸国は、一時的に「脱炭素」の動きが止まるもののまず「脱ロシアエネルギー」を掲げることを
選択しました。具体的には石炭火力発電所の再稼働や閉鎖の延期、他のガス供給源の確保などを通じて、ロシアの天然ガスへの
依存度を下げる道を模索し始めました。
また、EUでは液化天然ガス(LNG)とエネルギー貯蔵の利用拡大、再生可能エネルギーの迅速拡大により、2030年よりかなり
前倒しでエネルギーの自立を達成する計画を発表したそうです。
欧州諸国は戦争を止めさせるためにロシアのエネルギーから勇気ある撤退をしました。ロシアにも本当にウクライナからの勇気ある
撤退を願って止みません。